ramp-meguri

2022.4.27 RELEASEDigital

『ランプ/巡り』 ▶︎


ランプ
巡り

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2020.4.8 RELEASEDigital

『ランプ/巡り』 ▶︎


ランプ
巡り

CREDITS

Lyrics and Music by Haruko Oishi

Vocal and Chorus: Haruko Oishi
Keyboards and Synth Bass: Go Kikuchi
Drums: Taiichiro Mura
Percussions and Radio: Ryotaro Miyasaka
Electric Guitar: Yuta Fukai
Recorded, mixed and mastered by Kohsuke Nakamura
Recording Studio: Shinkai Studio

Illustration: María Medem
Design: Mao Suzuki

アートワーク素材提供: 青いレール.com

LYRICS

1 ランプ

憧れていた
地上に無い色の光が
また誰かを連れていく

脈みたいな道路に流した願いは
橋くぐる度 大人びて
戻った日には 日が短い

奪われそうな路地裏は匂い立ち
衛星が見下ろす一日ごとに
剥がれる瓦一枚ごとに
気づいた日には 日が短いんだけど

見つけたり 失くしたり
変わる街で 待ち合わせたいのはあなたで

聞き慣れていた交通情報と
働く家電の音よこして欲しい

地平線が崩れて
朝日が遅れても ランプウェイは
誰かの深呼吸に頷いて
人を渡す 人を渡す

見つけたり 失くしたり
変わる街で 待ち合わせたいのはあなたで

2 巡り

低気圧が通り過ぎる
窓辺に観測点ひとつ

日々はもつれているから
意味のない遊び繰り返そう

数字列が文化になる頃も
私たちなら

あらゆることを
丁寧に笑い話にしながら
細いゆび踊らせては
好きなもの増やすだろう

昼にも夜にも似合う
あの子の声が寄せてくる

巻き上がる日々の合間で
折をみてフレーズを探そう

あらゆることを
丁寧に笑い話にしながら
細いゆび踊らせては
好きなもの増やす

まだ誰も気づかない満ち欠けについて
ここでそっと唱えるのを聴いていてほしい
巡ってみてほしい

REVIEW

昨年のEP『賛美』で私たちの眼前に現れた大石晴子。その歌はじわりと波及していき、ラジオや東京外のライブイベントへの出演も果たした。あどけなさを残しながらいびつなメロディをポップにねじ伏せていく確かな歌声と、感動屋な人となりが滲む歌詞、音楽への真っすぐな愛情と敬意に溢れたこの作品を私は次のように評した。「日常に散らばった、ささやかな幸せを愛でるソウル・チューン」と。

そこから8か月経って届けられた本作。「ランプ」はMoonchildなど現行ネオ・ソウルとの同時代性が感じられる、揺らぐグルーヴとどんどん飛躍していくメロディ、大胆なシンセ・ベースの音色。『賛美』から一歩踏み出したフレッシュなサウンドだ。後半にかけて滑らかにドライブをかけていく音像と、最後に残るラジオのノイズ音は、運転中を演出するかのよう。その後、車から降りてドアを閉めるような音が入ったと思えば、それがビートとなって次曲「巡り」へと繋がる。鮮やかな移行を経て、ピアノ主体の演奏をバックに、大石のルーツである讃美歌を思わせる独唱で丁寧に歌詞をメロディにしていく。演奏のアプローチは違えど、2曲ともに都市の再開発や、昨年の台風19号を始めとする自然災害から着想を得て描かれている。当たり前の日常はないのだと悟りながら、その戸惑いに折り合いなんてつけられないまま。未曾有の感情が滲みつつも気丈に歌う大石の表現には『賛美』からの成長と頼もしさすら感じられる。これは日常が否応なしに未来へずれていくことを受け入れるための歌なのだ。そしてその「ずれ」は、この曲が出来た瞬間よりも今リアルタイムで広がり続けている。たった2か月前の日常が、こんなにも遠く感じるなんて。

 “見つけたり 失くしたり 変わる街で 待ち合わせたいのはあなたで”「ランプ」

 “日々はもつれているから 意味のない遊び繰り返そう”「巡り」

誰も知らない時代を私たちは今生きている。凛とした強さと不安を受け止める度量を持った本作は、聴く人の心に寄り添うランプウェイとなって、向かう先へと確かに繋いでくれるだろう。いずれ必ず来る、変わり終えた街に再び人々が繰り出し始める日。あなたは誰と幸せな待ち合わせをしますか。


峯 大貴

音楽ライター 京都を拠点に活動するミックスカルチャーマガジン「ANTENNA」

COMMENT

渋谷で飲んだ日、窓際の席で、道路のアスファルトがベリベリ剥がされていくのをしばらく見下ろしていました。それで再開発について書き始めたこの曲なのですが、昨年の10月台風19号がきて、意味合いを少し広げることにしました。開発や災害によって待ち合わせの目印にしていた場所が無くなったり、新たに整備されたり、そんな変化の中で暮らしていくんだということを歌いたかったです。

人は目に見えない力とか、奇跡と呼ばれるものを信じて憧れるのに、一方でそういうものによって何か失うことがあります。「どうしてあの人が死んでしまったんだろう」とか。毎日通った路地裏が、普段通りの生活が、そこに在るということを意識するのは難しくて、私も気付くのがやっぱり遅いです。のちのち断片的にも思い返せるのは、路地裏や生活は全てを知っていて、あの頃から匂い立っていたからかも知れません。ラジオが伝える交通情報や冷蔵庫がブンと鳴る音、一定の頻度で会える人についても、台風が通過していく夜になってやっと、恋しいと思いました。

翌朝マクドナルドの窓際の席で、氾濫した川について、橋や道路について考えていました。人を渡していくものとして。ランプウェイは誰かの決意を知っているみたいに、その決意に応えるように又、人を渡してくれます。

災害があったとき、それについて触れるのは凄く難しいです。昨年の台風19号のあと、なんだかずっと悲しかったけど、いつもと変わらずご飯を食べている私がどうして泣きそうなんだろうと。どうしてしんどいと言えるだろうと。数日後、台風で氾濫した川のそばに住む友人と数人で当日のことも話しながらご飯を食べて、たまに大笑いしました。帰り道は足が軽くて、本当に、空を見上げたりしました。悲しさを含んだモヤモヤが晴れて消えるということはないけど、友人を、その時間を、好きだと思いました。今後も苦しいことがあって、その隙間に落ちていることを、いつか笑い話にするかも知れないです。そんな風にしながら、自分の好きなものが増えていきます。

すれ違った人の違和感や、理科の授業と社会の授業が繋がった瞬間。まだ誰も気付いていない素敵なことを見つけたら、話してみたいです。大丈夫です、私たちなら、と歌いたかったです。

RADIO

4/7  FM802『MIDNIGHT GARAGE』先行OA
4/8  FM NORTH WAVE『XROSS JAM』
4/8  α-STATION『LIFT』
4/10  FM NORTH WAVE『KAT’S in the morning』
4/12  FM NORTH WAVE『BRAND-NEW TUNE』